28年前の阪神淡路大震災の教訓を風化させてはいけない。国も阪神淡路大震災をきっかけに活断層のリスクを評価している。
主要活断層帯の30年以内地震発生確率
28年前(1995年)の阪神淡路大震災が活断層がずれ動く大地震で引き起こされたことをうけ、国は全国の活断層帯のうち、長さが概ね20kmを超え、地震が起きると社会的に大きな影響がでる活断層帯を重点的に調べ、今後30年以内に地震が発生する確率など、リスクを評価して公表しています。
全国114の主要な活断層帯のうち、2023年1月1日時点で発生確率が3%以上と切迫度が最も高いSランクが含まれるのは31あります。このうち、8つの活断層帯では確率が8%を超え、阪神淡路大震災の発生前より切迫度が高くなっています。
Sランクでかつ発生確率が(30年以内の地震発生確率)8%を超える8つの断層帯
糸魚川ー静岡構造線断層帯(中北部区間) 最大30%
糸魚川ー静岡構造線断層帯(北部区間) 最大16%
日奈久断層帯(八代海区間) 最大16%
境峠・神谷断層帯(主部) 最大13%
中央構造線断層帯(石鎚山脈北縁西部区間) 最大12%
阿寺断層帯(主部/北部) 最大11%
三浦半島断層群(主部/武山断層帯) 最大11%
安芸灘断層帯 最大10%
地震調査委員会の平田委員長(東京大学名誉教授)は、
「活断層があるということは、過去に大きな地震が繰り返し発生しているというのは最も重要な地形学的な事実で、そういった活断層というのは日本の内陸及び沿岸域にはたくさんあるので十分を注意をしていただきたい」と述べています。
30年以内地震発生確率が8%を超える8つの断層帯
Sランクのうち発生確率が8%を超える切迫度の高い断層帯の場所と過去の活動は下記のとおりである(いずれも政府の地震調査研究推進本部ウェブサイトより抜粋)。発生確率は2023年1月1日現在のもの。
◆糸魚川ー静岡構造線断層帯(中北部区間、北部区間)・・・最大16%
<過去の活動>
北部(小谷−明科)区間の最新活動時期は、約1千3百年前以降、約1千年前以前と推定され、西暦762年の地震(マグニチュード(M)7.0以上)の可能性もあります。平均的な活動間隔は1千年−2千4百年程度と考えられます。平均的な上下方向のずれの速度は1−3m/千年程度と推定されます。
中北部(明科−諏訪湖南方)区間の最新活動時期は、約1千2百年前以降、約8百年前以前と推定され、西暦762年もしくは841年(M6.5以上)の地震の可能性もあります。平均的な活動間隔は6百−8百年程度と考えられ、平均的な左横ずれの速度は9m/千年程度と推定されます。
中南部(諏訪湖北方−下蔦木)区間の最新活動時期は、約1千3百年前以降、約9百年前以前と推定され、西暦762年もしくは841年の地震の可能性もあります。平均的な活動間隔は1千3百年−1千5百年程度と考えられます。平均的な左横ずれの速度は5−6m/千年程度と推定されます。
西暦762年の地震が本断層帯の活動であった場合、北部(小谷−明科)区間と中北部(明科−諏訪湖南方)区間が同時に活動した可能性もあります。
南部(白州−富士見山)区間では、最新活動時期は約2千5百年前以降、約1千4百年前以前と推定されます。平均的な活動間隔は4千6百年−6千7百年程度と推定されます。平均的な左横ずれの速度は1m/千年程度と推定されます。
◆日奈久断層帯(八代海区間)・・・最大16%
<過去の活動>
高野−白旗(しらはた)区間は、最新活動時期が約1千6百年前以後、約1千2百年前以前と推定されます。平均活動間隔は不明です。活動時のずれの量は、右横ずれを主体として2m程度であった可能性があります。
日奈久区間は、平均活動間隔が3千6百年-1万1千年程度である可能性があります。最新活動時期は約8千4百年前以後、約2千年前以前と推定され、活動時には断層南東側の3m程度の相対的隆起とそれ以上の右横ずれがあったと推定されます。
八代海区間は、平均して1千1百年-6千4百年程度の間隔で活動した可能性があります。最新活動時期は約1千7百年前以後、約9百年前以前と推定され、西暦744年(天平16年)の肥後地震の可能性があります。活動時には3m程度ずれがあったと推定されますが、ずれの向きは不明です。
◆境峠・神谷断層帯(主部) ・・・最大13%
<過去の活動>
境峠・神谷断層帯主部の最新活動時期は、約4千9百年前以後、約2千5百年前以前であったと推定されます。また、平均活動間隔は約1千8百−5千2百年の可能性があります。
霧訪山−奈良井断層帯の最新活動時期を含めた過去の活動については、十分特定できません。
◆中央構造線断層帯(石鎚山脈北縁西部区間) 最大12%
<過去の活動>
中央構造線断層帯は、過去の活動時期の違いなどから、全体が10の区間に分けられます。
金剛山地東縁の奈良県香芝市から五條市付近までの区間(①金剛山地東縁区間)の最新活動は、1世紀以後、3世紀以前であったと推定され、1回の活動に伴う上下方向のずれの量は1m程度であった可能性があります。その平均的な活動間隔は約6千-7千6百年であった可能性があります。
和泉山脈南縁のうち、奈良県五條市から和歌山県紀の川市付近までの区間(②五条谷区間)の最新活動は、約2千2百年前以後、7世紀以前であったと推定され、1回の活動に伴う右横ずれ量は3m程度であった可能性があります。平均的な活動間隔は不明です。
和泉山脈南縁のうち、和歌山県紀の川市から和歌山市付近に至る区間(③根来区間)の最新活動は、7世紀以後、8世紀以前であったと推定され、1回の活動に伴う右横ずれ量は4m程度であった可能性があります。平均的な活動間隔は約2千5百年-2千9百年であった可能性があります。
和歌山市付近ないしその西側の紀淡海峡から鳴門海峡に至る区間(④紀淡海峡-鳴門海峡区間)の最新活動は、約3千1百年前以後、約2千6百年前以前であったと推定され、1回の活動に伴う右横ずれ量は4m程度であった可能性があります。その平均的な活動間隔は、約4千-6千年であった可能性があります。
四国東端の徳島県鳴門市付近の鳴門断層から美馬市付近の井口断層に至る区間(⑤讃岐山脈南縁東部区間)の最新活動は、16世紀以後であったと推定され、1回の活動に伴う右横ずれ量は2-7m程度であった可能性があります。その平均的な活動間隔は約9百-1千2百年であった可能性があります。
徳島県美馬市付近の三野断層から愛媛県新居浜市付近の石鎚断層に至る区間(⑥讃岐山脈南縁西部区間)の最新活動は、16世紀以後、17世紀以前であったと推定され、1回の活動に伴う右横ずれ量は2-7m程度であった可能性があります。その平均的な活動間隔は約1千-1千5百年であった可能性があります。
愛媛県新居浜市付近の岡村断層による区間(⑦石鎚山脈北縁区間)の最新活動は、15世紀以後であったと推定され、1回の活動に伴う右横ずれ量は6-8m程度であった可能性があります。その平均的な活動間隔は約1千5百-1千8百年であった可能性があります。
愛媛県西条市付近の川上断層から松山市付近の重信断層に至る区間(⑧石鎚山脈北縁西部区間)の最新活動は、15世紀以後、18世紀以前であったと推定され、1回の活動に伴う右横ずれ量は2-5m程度であった可能性があります。その平均的な活動間隔は約7百-1千3百年であった可能性があります。
愛媛県松山市付近の伊予断層から伊予灘に至る区間(⑨伊予灘区間)の最新活動は17世紀以後、19世紀以前と推定され、1回の活動に伴う右横ずれ量は2m程度であった可能性があります。その平均的な活動間隔は約2千9百-3千3百年であった可能性があります。
豊予海峡から大分県由布市付近の由布院断層に至る区間(⑩豊予海峡―由布院区間)の最新活動は17世紀頃であったと推定され、1回の活動に伴う上下ずれ量は2-5m程度であった可能性があります。その平均的な活動間隔は約1千6百-1千7百年であった可能性があります。
◆阿寺断層帯(主部/北部)・・・ 最大11%
<過去の活動>
阿寺断層帯主部(北部)の最新活動時期は約3千4百年前以後、約3千年前以前と考えられ、平均活動間隔は約1千8百−2千5百年であったと推定されます。
阿寺断層帯主部(南部)の平均的な左横ずれの速度は約2−4m/千年であった可能性があり、活動時には、4−5m程度の左横ずれが生じたと推定されます。また、南部の最新活動時期は1586年(天正13年)の天正地震であった可能性があり、平均活動間隔は約1千7百年であった可能性があります。
◆三浦半島断層群(主部/武山断層帯)・・・最大11%
<過去の活動>
三浦半島断層群主部は、過去の活動時期の違いから、北側の衣笠・北武断層帯と南側の武山断層帯の二つに分けられます。
衣笠・北武断層帯の最新活動時期は、6−7世紀であったと考えられ、信頼度は低いですがその平均的な活動間隔は概ね1千9百年−4千9百年程度であった可能性があります。
武山断層帯の最新活動時期は、概ね2千3百年前以後、1千9百年前以前であったと考えられ、その平均的な活動間隔は1千6百年−1千9百年程度であったと推定されます。
なお、1923年大正関東地震の際に、武山断層帯の陸域部の東端付近で、地震断層が出現したことが知られていますが、地震断層が現れた範囲は1km程度とごく短い区間であることから、これは関東地震に付随した活動であり、武山断層帯固有の活動ではないと推定されます。
三浦半島断層群南部の最新活動時期は約2万6千年前以後、約2万2千年前以前であったと推定されますが、その平均的な活動間隔は不明です。
◆安芸灘断層帯・・・最大10%
<過去の活動>
安芸灘断層群主部の平均的な右横ずれの速度は不明ですが、上下方向のずれの速度は、0.1m/千年程度の可能性があります。最新活動時期は、約5千6百年前以後、約3千6百年前以前であったと推定されます。活動時の右横ずれ量は2m程度で、平均活動間隔は2千3百~6千4百年程度の可能性があります。
広島湾−岩国沖断層帯の平均的な右横ずれの速度は不明ですが、上下方向のずれの速度は、0.2m/千年程度の可能性があります。なお、広島湾−岩国沖断層帯の最新活動時期、平均活動間隔は不明です。
30年以内地震発生確率が3%を超えるSランクの活断層帯
先述した8つの活断層帯は今後30年以内に地震発生確率の高いSランクのうちでも8%を超え、阪神淡路大震災の発生前より切迫度が高くなっている活断層帯でした。
この8つは極めて切迫度が高い活断層帯と言えますが、Sランクのそれ以外の活断層帯も切迫度が高い地域であることには変わりがありません。
みなさんの居住地域や今後マイホーム購入予定などで居住する可能性のある地域のリスクをしっかりと認識して、備えてほしいと思います。
場所は政府の地震調査研究推進本部ウェブサイトより抜粋。発生確率は2023年1月1日現在のもの。
◆糸魚川-静岡構造線断層帯(中南部区間)・・・最大8%
◆山形盆地断層帯(北部)・・・最大8%
◆高田平野断層帯(高田平野東縁断層帯)・・・最大8%
◆宍道(鹿島)断層・・・最大6%
◆警固断層帯(南東部)・・・最大6%
◆砺波平野断層帯・呉羽山断層帯(砺波平野断層帯東部)・・・最大6%
◆弥栄断層・・・最大6%
◆日奈久断層帯(日奈久区間)・・・最大6%
◆庄内平野東縁断層帯(南部)・・・最大6%
◆新庄盆地断層帯(東部)・・・最大5%
◆黒松内低地断層帯・・・最大5%
◆櫛形山脈断層帯・・・最大5%
◆奈良盆地東縁断層帯・・・最大5%
◆砺波平野断層帯・呉羽山断層帯(呉羽山断層帯)・・・最大5%
◆高山・大原断層帯(国府断層帯)・・・最大5%
◆サロベツ断層帯・・・最大4%
◆塩沢断層帯・・・最大4%
◆周防灘断層帯(周防灘断層帯主部区間)・・・最大4%
◆菊川断層帯(中部区間)・・・最大4%
◆雲仙断層群(南西部/北部)・・・最大4%
◆木曽山脈西縁断層帯(主部/南部)・・・最大4%
◆十日町断層帯(西部)・・・3%以上
◆上町断層帯・・・最大3%
◆三浦半島断層群(主部/衣笠・北武断層帯)・・・最大3%
◆琵琶湖西岸断層帯(北部)・・・最大3%
◆福智山断層帯・・・最大3%
阪神淡路大震災から28年で思うこと
少し前に、「阪神淡路大震災から28年ーマイホーム購入時の教訓」と題した記事を書きました。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」。この教訓はマイホーム購入時にも当てはまるという持論を展開しました。
▶︎詳細は、こちら↓の記事を読んでください。
マンションはなぜ販売されるのかーーマイホーム購入時に考えるべきこと
私は不動産鑑定士として50年活動してきた不動産の専門家ですが、地震など自然的災害の専門家ではありません。ですから、地震などの予測を必要以上に煽って、みなさんの不安を増長させるような意図は全くありません。
しかし、不動産の専門家としての立場として言わせてもらえば、不動産と自然的災害は非常に密接な関係があるため、とくに一生に一度あるかないかの高額な買い物であるマイホームの購入を絶対に失敗してもらいたくないのです。
敗戦後の日本の住宅は欧米化が進み、もともと国土が狭く、都市部への一極集中型社会にならざるを得ないことを考えれば、マンションという住宅形式の採用は仕方のないことでしたが、問題は、マンションという住宅形式ではなく、その分譲販売にある、ということも繰り返し主張してきました。
マンションに限らず、一戸建てであっても震災等の自然的災害リスクはありますが、もし被災した時の経済的損失を考えたとき、どちらが経済的損失を被るかということなのです。
一戸建て住宅とマンションの新築取得後から30年後の資産価値比較や被災した場合の違いなどについては、こちら↓の記事を読んでください。
こんなマンションは買うな!不動産鑑定士のマンション購入アドバイス
上記のような主張をしてきましたが、阪神淡路大震災や東日本大震災、また、河川の氾濫による浸水等の自然的災害が多発するなかで、ますます私の持論自体は正しいものであると確信すると同時に、これらの教訓を多くの人に知ってほしい、この教訓を活かして絶対にマイホーム選びに失敗しないでほしいという思いから、当サイトを立ち上げ、不動産と自然的災害の密接な関係について情報発信していこうと考えています。
私は関西で生まれ育ち、学生時代を神戸で過ごしました。多くの学生時代の友人や親戚も神戸で被災しました。そんな愛着のある街神戸で起きたこの震災を絶対に風化させてはいけないと思いますし、また、震災後に起きたマンション購入者の不幸な出来事も絶対に教訓として生かさなければいけないとの思いから、残り少ない人生、命ある限り、この教訓を次世代に継ないでいこうと思っています。